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- 2019.04.10 Wednesday
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忘れられない甘味がある。それは「甘酒」だ。
「酒飲み」と思われてもしょうがない答えで恥ずかしいが、事実である。
実家では、年を越すと家族全員で近くの神社へ初詣に行った。深夜0時過ぎて出歩くのが嬉しくて、弟とはしゃいで怒られたものだ。
その神社では、小正月のどんど焼きかと思うほどの、大きな矢倉を組んでボンボン燃やすのが名物だった。遠くから見ても、火の粉が舞い、オレンジ色の炎が冬の夜空に映え美しかった。
参拝が終わった人たちは、火の辺りにたむろして暖をとる。
そこで、神社から串に刺したスルメや餅、マシュマロ、そして「甘酒」がふるまわれる。
「コメらは、火の前に行きっせ」。
人混みでまごついていると、大人が良い位置に通してくれる。たいてい、私はスルメ、弟はマシュマロをあぶりながら、「甘酒」をいただいた。ゆげが立ち上る器に顔を近づけると、ほのかに麹の香りがする。甘くて白い飲み物。「酒」と名前がつくものを大っぴらに飲むというドキドキ。大人たちの新年の挨拶とたわいない雑談。
*コメら:子どもたち(会津地方の方言)
新年 初詣 オレンジの炎 白い息 冬の星空 ちらつく雪
こんな記憶が、いっそう甘美な味わいにしているのだろう。
発酵食ブームで、甘酒もさまざまな種類が売られている。酒粕を買ってきて自宅で作る人も多いらしい。でも、この初詣の「甘酒」よりも美味しいものには出会ったことがない。甘味といえば、金星だろう。私の9ハウスにある金星は、味わいや触感、見た目以上に、情景や心象によって濾過され普遍化した印象で記憶される。
プルーストの「失われた時を求めて」のマドレーヌのごとく、これ以上の「甘酒」に出会えるだろうか。
北形 兆(Kitakata chou)
Twitter:@kitakatachou13
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